今回はだじゃ研メンバーの新倉壮朗さんにまつわるインタビューです。フリーダムなだじゃれサウンドの中心で活躍する壮朗さんについて、お話を伺いました。
※インタビューにあたり、新倉書子さん、小日山拓也さん、石橋鼓太郎さんにもご協力いただきました。
◆だじゃ研には、いつ頃から関わっていますか?
一番最初の『風呂フェッショナルなコンサート』(2012年)の時からです。本番ではケロリン桶を叩いて、番台で歌も歌いました。それ以前は、壮朗はあらゆる場で意思伝達ができないからと集団への参加を拒否されていました……。だじゃ研にはたまたま、野村さんと知り合いだったこともあり受け入れていただいています。それでもほかの参加者の人たちは誰も壮朗を知らないから、最初は「何だこの子? 」って印象だったと思います。壮朗のことを認めてくれている野村さんと一緒だと、それが徐々にほかの人たちにも伝わって、いい雰囲気になっていったのだと思います。
◆だじゃ研や野村さんの印象はどうでしたか?
だじゃ研は、野村さんがつくった誰でもが集まれて音楽を楽しみ、遊べる場。そこでは壮朗が違和感なく居られるというのが一番の印象です。壮朗を特別視しない、排除しない、そういう場はなかなかないです。障害者だけが参加する場はありますが……。だじゃ研は貴重で誇れます。今後、だじゃ研のような場が増えれば、「障害があってもこんなにみんなと溶け込んで楽しくできるんだ」と思えて、住みやすい社会になります。この場をつくっている野村さんは素晴らしいと思います。
◆だじゃ研に長年関わる中で、変化を感じることや印象的なことなどありますか?
小日山:壮朗さんがある時から人の音をよく聞くようになったと思います。即興演奏において一番大事で一番難しい、「自分もガーッとやっているけど人の音もちゃんと把握する」というのが、一番上手いんじゃないかな。
石橋:舞台上で何が起こっているか、お客さんがどういう感じかをよく見ていて、その中で自分はどうするのかを結構考えている感じがします。壮朗さんが居ると一番違うのは、音楽の終わり方です。壮朗さんにとって「ここで終わりだ」っていうところがあって、メッセージをうまく出して、絶対に終わらせてくれますね。
新倉:その時々でやりたいことをやっちゃうから、みなさんに迷惑をかけてしまい、いつもハラハラしていますが(笑)、でも熊倉先生※1 が「壮朗くんが居ると居ないのでは全然違って、壮朗くんが居ると画竜点睛ですよ」と言ってくださったので、その時はすごく嬉しかったです。言葉はできないけれど、太鼓でもピアノでもマリンバでも、音での表現は自由自在です。体中から発するリズムが小さい時からすごかったんです。誰でも、自分で楽しむリズムを持っていると思うんですが、「こうしないといけない」という観念があると、だんだんとそうせざるを得なくなって、自分で表現する力がだんだん違う方向に行ってしまうのかもしれません。
小日山:やりたいことがブレてない。それに影響されて、出会った人たちがちょっとずつ視点とか目標を変えたり変えなかったりしてるんだろうなと思います。勝ち負けのない、傷つかない勝負っていうのがそこかしこに見られて、それも魅力です。自分も目指したいですね。
石橋:壮朗さんのコンサートを毎年聞いていますが、自ら先頭に立っていくようになったのは、だじゃ研での経験によるところが大きいのかなと思います。壮朗さんも目立っているけど、壮朗さんだけの音楽にはなってない、というか。見ている側としては、毎回共演者の側がすごく試されている感じがします。「壮朗の音楽」と向き合う。みなさん、それこそ汗だくになるくらい。
◆壮朗さんについて改めて伺えますか?
学校教育の場では大好きな音楽活動は制限されていました。今は素敵に吹く鍵ハモも、小学校では演奏させてもらえませんでした。中学校でも、文化祭の障がい児学級のステージではコンガを頭打ちで叩くだけでした。後に、その時の音楽の先生が壮朗のコンサートに初めて来て「僕のやってた音楽教育は何だったんでしょうね」との言葉をくださり、嬉しかったです。
小学校6年生の時、西アフリカ・セネガルのサバールという打楽器のワークショップの再募集を新聞記事で見て、壮朗も参加させてもらいたいと電話したら、嬉しいことにOKをいただきました。この出会いがアフリカ音楽とつながりました。サバールは難しいけどかっこよくて、一番好きな楽器です。アフリカの方々は「all together」のハートがすごくて、ライブハウスで踊ったり、叩いたり、熱狂がすさまじかったです。
近日中に2作目のドキュメンタリー映画が公開されます。1作目はダウン症をもったミュージシャンの物語のような感じでしたが、今回は愉快痛快のミュージシャン 壮朗を描いています。野村さんと壮朗、だじゃ研のみなさんと壮朗のシーンがたくさん出てきます。多くのみなさまに観ていただきたいです。
◆壮朗さんにとって、だじゃ研とは?
音楽を大勢の人と一緒にやる「楽しさ」、それがあるからだじゃ研には来ていると思うんです。野村さんの「好きなようにやる、逸脱は新しい創造」の言葉に後押しされて、壮朗は思い切り、超楽しんでいます。
◆次の『千住の1010人』に向けてひと言お願いします!
前回は打楽器隊で、率先してジェンベを叩いていました。次回はどうするかわからないですが、やりたいものをやると思います。
壮朗:ジェンベ。うん、ジェンベ。
※1 熊倉先生:音まち千住の縁のプロデューサー。東京藝術大学教授。
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