今回は2020年度から千住だじゃれ音楽祭に学生スタッフとして携わる遠藤青天さんへのインタビューです。オンラインでの最初の驚きから対面での心地よい交流、そして音楽に対する新たな視点など、様々なエピソードを交えたお話となりました。
◆遠藤さんご自身について伺えますか?
音環(※1)の学部4年生です。地元の茨城県で吹奏楽団に所属していて、そこで最近まで指揮者を務めたりもしていました。
◆藝大の音環はどのように見つけたのでしょうか?
高校3年の時、インターネットを使って調べたら音環が検索に引っかかったんです。先進的なことをやっていて面白そうだぞ、というのが先にあって、それから熊倉研究室(※2)でやっているようなアートプロジェクトの現場に出ていく取り組みが、自分の関心事に近いかなと思いました。
◆だじゃ研に関わるようになったきっかけを教えていただけますか?
2020年に入学した時は、熊倉研究室がどういうことをしているのかはっきりとはわからない状態だったんです。コロナ禍だったので、授業もオンラインばかり。でも、6月か7月ぐらいにどこかのプロジェクト(※3)に所属することになり、研究室の活動を改めて調べてみたところ、実施しているプログラム「千住だじゃれ音楽祭」に興味を持ちました。最初に惹かれたのはその「だじゃれの言葉遊びの力を使って、言葉以外の何かも繋ぐことができるのではないか」というコンセプトでした。だじゃれのことを考える時によくイメージしている言葉が、「アナロジー」といって、いくつかの事柄の共通点を発見して繋げていく、まさにだじゃれのような考え方なのですが、そういう考え方をメインに据えて展開していくプロジェクトって一体何なんだろう、と思って興味を持ちました。
◆野村さんやだじゃ研の第一印象はどうでしたか?
最初にだじゃ研の活動を見たのはオンラインの画面越しでしたが、何をしているか分からなかったですね。画面の向こうで楽器とも楽器じゃないともつかないような不思議なものを使って音を流したりしていて。これは何なんだろう、これが何になるんだろうというのが分からなくて、不思議な集まりだなと思いました。
◆オンラインと対面のだじゃ研を比べて感じた変化、最初の印象から変わったことなどはありましたか?
オンラインで参加していた時期は画面の向こうがどういう空気感か掴めず、関わり方も分からなかったのですが、対面で一緒にセッションして話をしてみると、いい意味でこだわりがないな、という印象を持ちました。内輪だけじゃなくて、外から自分みたいな新参者がふらっと現れても、はじめから居たように扱われるというか。居てもいいんだなと思えると同時に、でも居なくても変わらないんだろうな、というのは、自分にとっては安心できる場なんです。だじゃ研は場として柔軟性があるし、すごく寛容な感じがしています。本当に変なこだわりがないというか、こうじゃないといけない、ということがなくて、どういう形でもその中に入っていけるんですよね。
◆だじゃ研で学生担当になってから、日常や音楽活動などに影響はありましたか?
ありましたね。特に中学の吹奏楽部でやってきたような音楽だと、コンクールに向けて音を合わせて練習するようなことをよくやっていたのですが、気持ちの部分でセッションすることや、空気の掴み方はだじゃ研で学びました。だじゃれ的なアナロジーというか、一見すると繋がっていないように見えることでも、見えないところで繋がりを感じたりとか、そういうことも増えている気がします。
◆遠藤さんにとって、だじゃ研とは? 高校時代の話になりますが、狭い教室に押し込められて、人の目を気にしたり、あるいは関心を向けられたりしてしまう状況が非常に苦しい感じがありました。それから進学はできましたが、コロナ禍でずっと家にいると、今度は大学のことがよく分からなくなってきてしまって。長い空白期間を経てだじゃ研の集まりにやっと対面で参加できた時には、そうやって一人でいるうちに、自意識ばかり育ち過ぎていました。でも、「腫れ物に触るような扱いをされるんじゃないか」なんて緊張しながら活動場所に足を運んでみたら、全くもって特別に扱われなかったんですよね。ある意味無頓着でいられることで、「あぁ、僕はいつでもここに入ってきてよかったんだな」と肩の力が抜けて、素直に音楽を楽しめるようになりました。私にとってのだじゃ研は「心地よい無頓着」であり、音楽もそういう快適な環境で表現できる場かな、と思います。
◆『千住の1010人』に向けて、だじゃ研を知らない方々へ一言お願いします!
いい意味でしがらみとかこだわりがないから、誰でも入ってこられる音楽。それが「だじゃれ」だと思います。あなたもぜひ一緒に、私たちと「だじゃれ」をやってみませんか。
※1 東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科のこと。
※2 音楽環境創造科の熊倉純子研究室。アートプロジェクトやアートマネジメントを専門とし、所属学生は授業の一環でアートプロジェクトの現場の運営に携わる。
※3 音楽環境創造科における専攻(ゼミ)のこと。
【2024年11月発行】
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